ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

J1 第20節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス

 中断明け、4分1敗といまだに勝てない仙台。今節は最も苦手とする清水との対戦になった。互いに点の取り合いになったゲームは3-2で仙台が制し、ついに天敵清水から11年ぶりに勝利を得られたと同時に、中断明けようやく1勝を挙げることができた。この勝利の要因はここまで苦しんできた選手たちの活躍があっての勝利だった。

 

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 仙台のスタメンは、大幅に入れ替わることとなった。まずは最終ラインに上本大海が1年9か月ぶりに復帰。そして前線には赤嶺が前節負傷、ウイルソンがケガ明けということもあり、トップ下に新加入の野沢、ワントップに武藤という布陣で臨んだ。対して清水は前節勝利した徳島戦と同じメンバーをスタメンで起用した。

 

 試合の入りこそは清水が、押し込んでファーストシュートを放ったものの、その後は仙台のペースで前半は進んでいった。その要因として挙げられるのは、上本、野沢の存在だった。上本の復帰により、CBに足の速い選手が入ったことで、自信を持ってラインを上げることができ、中盤がよりコンパクトになり、前からしっかりとプレスがかけれるようになった。また、裏を取られても上本の的確なカバーリングと読みで危険な場面を作らせることはなかった。また攻撃面では野沢が効いた。野沢は生粋のパサーでよくボールが収まるし、正確なパスを配給できるので、仙台の攻撃が格段に良くなった。また、野沢が正確なパスを出してくれるので武藤や太田が自信を持って裏へ飛び出せるようになった。そして、野沢は、自分が斜めにフリーランすることで太田が中央に入ってきたりできていたので、攻撃に流動性が生まれた。そして12分に野沢のトリッキーなパスから抜け出した武藤がカットインし、左足でネットを突き刺し、仙台が先制する。武藤の得点はまさにゴラッソだった。そして20分には太田のパスを受けた武藤がワンタッチでCBを抜き去り、ループシュートで追加点を決める。武藤はこの試合、本当に水を得た魚のごとくプレーしていた。武藤は仙台に来て4シーズン目になるが、ようやく自分のストロングが生きる場所でプレーができたのではないだろうか。

 その後も仙台が優位にゲームを進める。清水のやりたいことをほとんどさせていなかったし、危ない場面もなかった。しかし、仙台のミスで大前にボールが渡ると上本がファウルを犯してしまい、いい位置でFKを与えてしまう。これをノヴァコビッチが冷静に決め、21で前半を折り返す。この失点させ除けば、仙台は今シーズンの中で最高の前半を過ごせることができていた。それだけに失点は余計だった。

 

 後半開始から清水は高木俊幸に代え、スピードのある村田を投入。大前を左に村田を右に置いた。さっそくそれが功を奏す。47分に左からのクロスを上げると上本がノヴァコビッチを引っ張ったとしてPKを獲得(ノヴァコビッチのアピールが派手すぎたので何とも言えないが・・・)、それを大前がきっちり決め、同点にする。仙台にとってはまたしても追いつかれる展開になり、課題をまたしても露呈してしまった。その後も攻めたのは、清水だった。右サイドに村田を入れたことでカウンターが機能し始め、サイドからチャンスを作る。しかし、点には結びつくことはなかった。仙台はウイルソンを投入し、流れを引き戻そうとする。そして、この交代がジャブのよう効きはじめ次第に仙台が攻め、セカンドボールを拾い始めると、77分にウイルソンが吉田に引っ張られ左サイドでFKを獲得。リャンの蹴ったボールは石川がそらし、最後はファーの鎌田が押し込み、勝ち越しに成功する。こうなったらこのリードを守り切りたい仙台、守りながらカウンターという形で、ゲームを進める。87分には菅井がPKを獲得するも、ウイルソンが決められず。最後は清水のパワープレーにも耐え、仙台は広島戦以来の勝利を得られることができた。

 

 今節は、冒頭にも書いた通り、今まで苦労してきた選手たちの活躍があってこそだった。膝のケガで1年9か月離脱し、長いリハビリに耐えてきた上本。鹿島で出場機会を得られず、チャンスを求めて移籍を決意した野沢。毎年、期待通りの結果が出ずもがいていた武藤。そんな3人の活躍があってこそだった。彼らはきっと苦しい日々も腐らずに努力し続けてきたからこそ、試合で結果を出せたのだと思う。そんなことを感じ取れるゲームだった。

 話は変わって、この試合で感じたことを別の角度から。今節、野沢がトップ下に入ったことで、仙台はここまでになかったくらいのボール回し、流動的な攻撃ができた。間違えなく野沢の影響あってのことだし、うまい選手が一人はいるだけで、これだけチームが変わるのだから、すごいことである。野沢獲得当初はリャンとタイプがかぶるのではないかと思っていたが、実は似て非なることが分かった。リャンは元々、自分がボールを配給するのではなく、自分が飛び出してゴールへ向かっていく選手である。いわば、セカンドトップのような役が得意な選手で、野沢はまさしくパサータイプで自分が使われるより、人を使うことに長けてる選手。リャンは人を使うことができなくはないが、本当は違うということだった。そういうことを理解したうえで仙台は野沢の獲得に踏み切ったのだと思った。そして、そんな野沢だが、使い方がだいぶ限定的になってくるような気がする。野沢は今の仙台であればやはりトップ下でやっていくようになる。サイドハーフだとどうしても仙台の場合、運動量が必要になり、上下動が激しくなる。そうなると今節のような野沢のプレーはあんまり見られなくなってしまう可能性がある。そして、野沢を起用する場合は、武藤やウイルソンのような裏への飛び出しができる選手を起用することになっていくだろう。赤嶺のような真ん中にどっしり構えるタイプの選手よりも、自分のパスを生かせる選手のほうがよりコンビネーションは組みやすいかもしれない。よって、これからは赤嶺、ウイルソンの前線に加え、野沢がトップ下に入るオプションも増えたので、この2つをどう使い分けていくかが、仙台の攻撃のポイントになっていくのではないだろうか。