ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

厚別攻略~明治安田生命J1第26節 北海道コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台~

 さて、今回は北海道コンサドーレ札幌戦を振り返ります。2週間ぶりのリーグ戦。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ここ4試合勝ちなしのベガルタ仙台。前節は鳥栖に敗れ、順位も15位まで落ちてしまった。巻き返しを図りたい中断明け一発目の試合である。

 前節からの変更点は2つ。まずは関口がフェイスガードを装着して左サイドハーフ

 帰ってきた。それから2トップの一角にハモンロペスが起用された。石原とジャーメインはベンチからのスタート。

 一方の北海道コンサドーレ札幌は、中断期間中に行われたルヴァンカップで初めてのベスト4進出を決めている。この勢いと代表帰りのメンバーを合わせ、リーグでもACL圏内へと進出したいところ。

 前節からの変更点は右サイド。右バックに負傷の進藤に代わって早坂、ウイングバックにルーカス・フェルナンデスが起用された。

 

前半

(1)仙台の狙いを整理する~守備編~

 この試合は札幌の戦い方に対して、しっかりと仙台が準備をしてきたことが勝利の要因となった試合となった。

 では、その仙台の準備してきたこと、狙いにしていたことを見ていきたい。

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 札幌のボール保持はお馴染の「ミシャ式」である。ボランチの1枚が列を降りて、4バック化、そして前線では5枚が張る形だ。

 この試合の仙台がミシャ式に対してポイントとしたのが、ミンテとダブルボランチの3人をどうやって見るのかである。

 仙台は基本的にこの3人を2トップが担当する。2トップの守備のスタートはアンカーにいる荒野。まずは、そこのパスコースを消す。そしてミンテにボールが渡るとハモンは荒野へのパスコースを切りながらミンテにプレスを掛け、札幌のパスルートをサイドへと誘導する。そして札幌の攻撃を限定させて、後方でボールを奪うという設計だった。

 またハモンがミンテにプレスに行ったときは、長沢はそのまま荒野を監視。逆もしかりで宮澤にボールが渡れば、長沢が出ていき、ハモンは荒野を監視するようになっていた。

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 また、札幌はミシャ式第二形態としてボランチ2枚が降りる形もある。このときの2トップは無理に追わない。ある程度札幌にボールを保持させて、中央を封鎖する形を取っていた。

 おそらくこの3枚の動きに対して、どうやって対応するかはトレーニングのなかでしっかりやってきたことだと思う。相手の変化に対してしっかり対応することができていた。さらに、仙台は札幌の攻撃ルートを右サイドへと誘導することが多かった。この辺は、攻撃とも絡んでくることなので、後ほど書きたいと思う。

 加えて後方は、相手の1トップ2シャドーに対して守備基準点を明確化させていた。列を落ちて後ろと前線の中継役を担っていたチャナティップへは富田。鈴木武蔵へは平岡。そしてジェイにはシマオと、誰が誰を見るのかを明確化したことで、縦パスが入ったときにも素早く対応することができていた。

 

(2)仙台の狙いを整理する~攻撃編~

 

 続いて攻撃の狙いを見ていく。

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 仙台の攻撃は主にカウンターからだった。ある程度狙い通りの守備ができていたことで、いい状態でボールを奪うことができ、また狙い通りのカウンターを発動させることができていた。

 札幌戦における仙台のカウンターにはしっかりデザインされたものがあった。特に「裏へ抜ける選手」と「足元で受ける選手」が明確になっており、全員の動きに連動性があった。

 ミシャ式におけるデメリットは、可変ゆえにおこる選手の移動だ。特にミシャ式は構造上中央に空洞ができやすい構造となっている。そこをしっかり仙台はポイントとしていた。

 この試合ではボールを奪うと中盤で長沢が一回収めるシーンが多く見られた。そしてボールを収めているうちにハモンと道渕が飛び出していく。

 この長沢の「タメ」があることでハモンと道渕が飛び出す時間を作ることができていた。

 

 先ほど、札幌の攻撃を仙台の左サイドへ誘導させていたと書いたが、それは道渕のポジションをなるべく下げたくないため、カウンターの急先鋒としての高い位置を保たせたかったからだと考えている。

 なので札幌も時間の経過とともに左サイドからの攻撃回数を増やし、道渕の位置を下げるようにしていった。

 それでも仙台はハモンが左サイドで抜け出すシーンを作りだし、かつミンテとの1対1を制することができていたので、そこまで痛手ではなかった。

 

 このように仙台は札幌に対して狙い通りの戦いをすることができ、「いい守備からいい攻撃」で、主導権を握ってゲームを進めることができた。

 そして32分に蜂須賀が奪ってからのカウンターから最後はハモンのシュートのこぼれ球を松下がプッシュし、先制に成功する。

 狙い通りにゲームを進めることができた仙台がリードし、後半へと折り返す。

 

後半

(1)左サイドから制圧し始める札幌

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 札幌は後半から早坂に代えて深井。配置を上図のような形にした。

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 札幌は、前半途中から行っていた左サイドの攻撃を整理した。

 深井が入り、左ハーフスペースへと斜めに降りてボールを受け、その間に福森が高い位置を取る。このことで道渕のポジションを下げさせることに成功し、札幌が左サイドを制圧しに掛かる。そして50分に左サイドから中央の荒野へ。荒野のミドルシュートが富田に当たりコースが変わって、同点に追いつく。

 また札幌が宮澤を右バックにしたのは、ハモンへの対策だったのかもしれない。早坂の裏を取られ、ミンテが引っ張り出される格好になっていたのをこの交代で修正した。

 

(2)同点後に再び突き放した仙台

 同点に追いつかれた仙台だが、その3分後に右コーナーキックからシマオが合わせて再度リードを奪うことに成功した。この試合のポイントと言っても過言ではない。

 また後半、札幌が左サイド(仙台の右サイド)からの攻撃回数が増え始めると、仙台はその裏を取れるようにハモンと長沢の位置を変えた。よって仙台は、札幌の攻めた裏をハモンに取らせてカウンターを発動させることができた。62分のハモンが収めて長沢へスルーパスを送り、決定機を演出したシーンは狙いがハマったシーンと言えるだろう。

 

(3)札幌の物理作戦と屈しなかった仙台

 リードを奪われた札幌は白井に代えてアンデルソン・ロペスを投入する。

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 札幌のシステムを無理やり表すならば、3-1-4-2みたいな形。これでもかというくらいの前傾姿勢の形を取ってきた。ミシャらしいと言えばミシャらしい選択。

 ただ、これで本当に攻撃の迫力が増したかといえば微妙なところで、個の能力に頼るぶん、組織的な崩しがなくなったことで、仙台は中央を締めながら、シマオや平岡を中心にしっかり弾き返すことができていた。仙台としては札幌がアバウトな攻撃を繰り出したことで、逆に守りやすくなったと思う。

 

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 そしてゲームをクローズに掛かる仙台。兵藤とジャーメインを立て続けに投入し、システムを4-1-4-1へ変更。チャナティップアンデルソン・ロペスに対しては松下と兵藤のインサイドハーフが見る形となり、富田がアンカーでカバーする配置となった。

 再度、守備の基準点を明確化したことで、守備もさらに落ち着きを取り戻し、そして85分に再びコーナーキックからハモンが決めてダメ押しの3点目。

 残りの時間もしっかりとクローズした仙台が3-1で勝利。5試合ぶりの勝利。クラブ史上初めての厚別での勝利。厚別攻略となった。

 

最後に・・・

 しっかり札幌戦に向けての準備をしての勝利。完勝と言っていい内容だった。

 相手の立ち位置を見て、全員で意思統一したサッカーができていたし、また相手の変化にも冷静に対応することができていた。この辺りは鳥栖戦の反省が活かされた部分だと思う。

 

 次の対戦相手は横浜Fマリノスだ。タイプは違えども、次節も札幌同様にボール保持から相手を押し込んでのスタイルを標榜している。

 ポイントは、守備の基準点を明確にすることができるかだと思う。札幌はある程度、型が決まっているが、マリノスの場合は選手の移動が目まぐるしい。そんなマリノスのボール保持に対してしっかり対応できるかどうかが、勝利へのポイントになるだろう。

 次節から再びホーム連戦となる。ホームではやっぱり負けたくない。次節も札幌戦同様に我慢強い守備で、連勝を目指してほしい!!

未来は僕等の手の中~明治安田生命J1第25節 サガン鳥栖vsベガルタ仙台~

 さて、今回はサガン鳥栖戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 川崎、湘南とのホーム2連戦は、どちらも引き分けだったベガルタ仙台。リードしても追いつかれる展開が続いている。

 スタメンは、前節・湘南戦から変更なし。ベンチにはケガから帰ってきた崇兆が入った。

 一方のサガン鳥栖は、フェルナンド・トーレス引退試合を大敗し、トーレスを快く送りだせなかった。今週は九州が大雨に見舞われ、被災された方々のためにも勇気を与える勝利を目指したい一戦だった。

 前節からは4人のメンバーが変更された。特に守備陣にはテコ入れ。高橋祐治高橋秀人センターバックに、左サイドバックには三丸が起用された。

 

前半

(1)サガン鳥栖のボール保持を紐解いていく

 まず、この試合の仙台の狙いを書く前に、ざっくりと鳥栖について書いていくこととしたい。

 鳥栖が特徴的だったのは、ボール保持の局面。おそらくここは対仙台の準備をしっかり行ってきたと思われる。

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 鳥栖のボール保持は、上図のような形が多かった。数字で表すならば、2-3-4-1。

 マリノス、名古屋とボール保持チームで経験の積んできた金井が存在することでできる形と言える。金井がインサイドハーフ化し、ハーフスペースでプレーする。

 横幅隊は三丸とアン。金森とクエンカがシャドーのような役割を担う。

 鳥栖の狙いは、仙台の4バックを広げさせて、その間(図で言う所のセンターバックサイドバックの間)を突撃し、ペナルティエリアへ侵入していく形だ。なので、一旦大外に広げてからの攻撃が多かった。

 

 また、人への守備意識が強い仙台の守備に対して、大外に一旦広げることで、仙台のサイドハーフを下げることを狙いとしていた。特に鳥栖の左サイドでは、三丸にボールが渡るたびに、道渕が下がるシーンが増えていく。これは鳥栖が狙いとしていたことだろう。

 前節の湘南もそうなのだが、仙台の守備をしっかりスカウティングするチームが増えて、サイドに人数を掛けられることで、仙台を押し下げるチームばかりになってきた。ここは課題の1つとなっている。

 

(2)可変する相手には、時間を与えない

 では、そんな鳥栖に対しての仙台の狙いを見ていくこととしたい。

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 ボール保持の局面で、4-4-2からシステムを可変し、仙台を攻略しようと図る鳥栖。ただ、サッカーの定跡して可変するデメリットとして、ボールを奪われたあとにシステムを戻す時間を要するというものがある。仙台が狙いとしていたのは、そこの部分だった。

 仙台はボールを奪うと素早く2トップへとボールを送る。鳥栖の中央、特にアンカーの位置には松岡しかおらず、そこでボールを収めるとカウンターを発動することが可能だ。

 前半は、石原と長沢が松岡周辺でボールを受け、サイドハーフが追い越していくことで、カウンターを発動していくシーンを何度も作ることができた。

 また鳥栖は可変することに加えて、攻撃時は前線に人数を掛ける。そのため、中央にオープンなスペースが生まれることも、スカウティングのなかであったと思われる。

 

 また鳥栖はセットした状態の守備も、仙台と同様に課題を持っていて、ゾーンで守るというよりは、こちらも人へ意識が強いために、守備のバランスが悪いときがある。

 20分の道渕のゴールも蜂須賀に対して三丸が寄せたことで、三丸とセンターバックの間にスペースが生まれ、結果的にそこへポジショニングしていた道渕が仕留めることができた。

 仙台としては、切り替え時にオープンなスペースから素早く攻めることと同時に、鳥栖にセットディフェンスの局面を作らせ、そこから押し込むことで、自分たちがボールを保持する時間を長く作りだしたかったなというのが、個人的な本音としてある。

 そこの判断をボランチ、特に松下なんかにして欲しいのだが、縦に急ぐあまりに攻撃が単調になることが多かった。そこの判断力とかゲームを読む力はもっともっと身につけて欲しいなと感じる次第である。

 

 前半は、道渕の2試合連続ゴールで先制した仙台がリードして折り返す。

 

後半

(1)前半の伏線を回収する鳥栖

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鳥栖は後半から松岡に代えて小野を投入する。システムは4-1-4-1へ。

 

 前半、仙台が先制した後の流れは、ボールを保持する鳥栖、引いて構える仙台という展開へと徐々に流れが変わった。鳥栖も前半の最後の方になると少しずつ仙台へ圧力を加えられるようになり、金監督としても手応えを得て、ハーフタイムを迎えたことだと思う。

 よって、前半の伏線を回収しに行く鳥栖。システムも可変することのない4-1-4-1へ変更することで、ネガティブトランジション(攻撃から守備へ切り替え)を素早く行えるような配置に変更した。

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 後半の鳥栖は、サイドで三角形を形成し攻め入るようになっていく。特に左サイドでは小野が投入されたことで、攻撃の迫力が増したのと同時に、自由に動くクエンカを見ながら、ポジションバランスを保つことで、アンバランスな状態にしないことを心掛けていた。

 また中央で2トップに簡単に収められていたセンターバックも、しっかり前ではじき返すことを徹底。そのことでセカンドボールを回収し、鳥栖が自分たちのターンを繰り返していった。

 

(2)あまりにも無抵抗だった仙台

 そんな攻勢を強めてきた鳥栖に対して、仙台はただただ防戦一方となるばかりだった。

 サイドハーフが下がり、後半はほぼほぼ6バックの状態で守備をしていた。相変わらずシマオと平岡の跳ね返す能力で、なんとか失点することなくゲームを進められていたが、前述の通り2トップがボールを収められなくなったことで、前半のようなカウンターを発動できない。そんな苦しい試合展開にも関わらず、なかなか手の打てず、無抵抗のまま、耐える時間をずっと続けていくばかりだった。

 渡邉監督は試合後の会見で、ひっくり返せばもう一度チャンスを作りだせたという話をしているが、おそらくピッチ上で戦っている選手としては、そのひっくり返すエリアを見つけ出せなかったように感じた。

 システムを変えるなり、大きなクリアから押し上げるなり、ボールを取り上げ、自分たちの時間を確保するなり、さまざまな対応策はあったのだろうが、そのどれを打つわけでもなく、とても残念な後半の戦いぶりだった。

 

(3)仕留める鳥栖金崎夢生

 鳥栖は、金森に代えて豊田を投入する。

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 仙台を6バック化させ、完全に自分たちのペースへした鳥栖。後半は特に左サイドからの攻撃でチャンスを作ることができていた。

 よって左サイドのユニットはそのまま、前線に豊田を投入し、左から中央で仕留める形へ変更。左右は不均等だが、これで鳥栖は最後の仕上げに掛かる。

 そして77分に金崎がPKを獲得し、自身がそれを決めて同点。その6分後には、中央のスクランブルから再び金崎が決めて逆転に成功する。

 

 仙台もハモン、阿部を投入し、最後の追い上げをしようと試みるが、自分たちが消費してきた時間は帰ってこない。

 アディショナルタイム5分をしっかりクローズさせた鳥栖が逆転勝利。仙台としては結果もだが、内容も不安と不満が残るものとなった。

 

最後に・・・

  90分を改めて見直してみて、鳥栖の方がしっかり準備し、チャレンジしていた。先制はされたものの自分たちが準備してきたものを信じ、最後までトライし続けた結果が逆転勝利に繋がったのだと思う。

 

 仙台はどうだっただろうかと。しっかり相手を見てサッカーをし、そしてこの試合でトライし続けただろうか。

 ここ最近、どこか閉塞感の漂う試合が続いてきたが、今回敗れたことで、その閉塞感が表立って出現したかなと。そういう意味では、この敗戦で、課題を洗いざらい反省できるし、思い切った修正もできる。そういう意味では、ポジティブに捉えることもできるかなと思う。

 大事なのは、この敗戦を意味ある敗戦。もう一回這い上がるためのばねにしなければならないということだ。この苦しい状況を渡邉監督はじめこのチームだったら乗り越えられると思うし、乗り越えるヒントを自分たち自身が持っていると思う。

 あとは、勇気を持つこと。恐れないこと。戦うこと。上を見れば、まだまだステップアップできる位置にいる。まずはもう一回、自分たちがどこを目標に戦っているのかを再確認してほしい。

 

 代表ウィークで中断期間に入る。次節はアウェイでの北海道コンサドーレ札幌戦だ。恐れず、勇気を持った戦いを。そして仙台らしいエモい試合を期待したい!!